季語の絵日記

日々移ろう季節の出来事をつづりました。

夏の終わりの法隆寺


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法隆寺のような見るべきものが山ほどあるお寺は、どうしたって気負いしすぎて疲れますから、何も見ないつもりでただのんびりとお参りするのもたまにはいいかもしれません。
風鈴の音に誘われて休憩所で一杯ジュースを飲む、こんな事もいつもはしない、そんなのんびりしていられない、なんといったって法隆寺。しかし今日はジュースを一杯飲んでしまってなおかつ風鈴の音を耳にぼやーっとするくらいの余裕を見せよう。

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法隆寺の境内はとてもきれいで、きれいな築地塀がめぐらされていますが、それでいてどこまでも古の雰囲気をたたえているところが、他のお寺と一線を画するこのお寺のすごさ。
回廊に囲まれた西院伽藍に入れば、世界最古の木造建築として名高い金堂、五重塔、それもしげしげとは見ずにただ伽藍配置の美しさを傍観し、金堂右手から中へと入れば、あまりにも有名な飛鳥時代の金銅釈迦三尊がおわします。いつもは気負い急いた気持ちで入るこのお堂、今日は落ち着いて、落ち着いていたために、堂内の見え方が違っています。
聖徳太子の生きた飛鳥時代は時代区分でいうと古代。金堂内は厳かな古代の雰囲気をたたえています。その古代の空気にどっぷりと浸ってしまい、なかなか離れることができず、ようやく、にわかに高ぶった感情をお堂に置いて外に出れば、雲行きはあやしく、風が強い。風は金堂と五重塔の屋根の隅という隅にぶらさがった風鐸を、小さなものはかんからかんと軽快に、大きなものはがらんがらんと鈍く揺らします。

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参拝を終えて近くのお店で夕飯を済ませた後、おぼろ月夜の下、ふたたび斑鳩(いかるが:法隆寺のある地域をこう呼びます)の里を散歩しました。日中あれほど暑かったのに、夜はもう涼しく、虫たちの声は秋が近いことを告げているのでした。