季語の絵日記

日々移ろう季節の出来事をつづりました。

女人高野でうつむいた


f:id:huutaku:20200925071034j:plain
 室生寺は奈良から三重へと続く山中に建つ名刹。女人禁制だった高野山に対し、女人の参拝が許されたこのお寺は「女人高野」と呼ばれました。

f:id:huutaku:20200925071052j:plain
前を流れる室生川の水は澄んで綺麗です。
私が室生寺にお参りする時はいつも雨、室生川の水も濁っておりましたが、今日は秋の水、水澄む、久しぶりの室生寺参り。
しかしからりと晴れた日の境内は、小雨降る室生寺のつややかな情緒に遠く及ばず、金堂へと続くあの素晴らしい石段は乾き、なんと味気ないこと。いや、味気ないのは私のこころ、実際今日、新しくできた宝物殿で拝見した釈迦如来像にも、弥勒堂の弥勒菩薩像にも強く感激しているのに、その感動をまるで喜べないほど、私の気持ちは干からびていたのです。
うつむき加減でお寺を出れば、帰りのバスまでずいぶん時間が余り、川沿いをしばらく散策してもまだ余り、川辺に降りることができるところに行って石にこしかけ、しばらくぼーっと水の流れるのを見ておりました。

f:id:huutaku:20200925071111j:plain
秋の水。なにかの稚魚がたくさん泳いでいます。小さなハゼのような魚が石にへばりついています。石の隙間でちっちゃい枯葉がヒラヒラとゆれると思ったら、これはヤゴの抜け殻です。
水で暮らしていたものが、ある日空での暮らしを始める。それは大きな飛躍のように思われますが、水澄み、空気も澄み、羽さえ手に入れれば、それほど変わったつもりもないのでしょうか。